2021年11月30日火曜日

Forkboy。

実はここ最近、例のトランスファーでまたトラブルが発生した。
トランスファーというのは水転写で貼る極薄のデカールの事。
水貼り転写とも呼ばれている。
これがね、確実にフィニッシュ出来るプロセス、
それが20年やってても確立出来ていないのです。。。。

モノによっては成功するし、モノによっては成功しない。
貼るメーカーのものによっても成功率が確立しない。

丁度1年前の今日
いつもトランスファーを発注している英国のファクトリーが
「スタッフがコロナに罹患した」という事で操業停止になった。
かなり長期停止状態になってしまい、
このVINCENTはオーナーさん直々に
VOC(Vincent Owners Club)より入手してくれたものであった。

先ず転写してみていつものところのとは全然違う事に気付く。
濡らしてから台紙からスライドし始めるまでの時間がかなり長い。
そしてトランスファーそのものが肉厚。

水でスライドさせる。
なので水抜きの為のフラッシュオフタイムが潤沢に必要。
上塗りのウレタンクリアに著しく侵される。
なので侵されないエナメルで一旦コーティングが必要。
エナメルとウレタンは無論相性が悪い。
なのでエナメルの自然硬化を潤沢に待つ時間が必要。
という事でウチでは貼り付けから待ち時間で1か月以上待ってます。

で、一気にウレタン吹くのではなくパラパラと吹き付ける。
これを24時間以内に6日程毎日パラ吹きで堆積させる。
パラ吹きなので表面ザラついて荒れに荒れる。
一旦水砥ぎして平滑にさせる。
これで72時間以上一旦休憩させる。
3日後こってりクリア載せてみる。
縮れ等生じなければようやく最終クリアを普通に吹き付ける。

これでようやくウレタンクリアの下に閉じ込められるので、
トランスファーは最低でも3か月以上はお預りする。
水・エナメル・ウレタンと相反するものばかりが交錯するので
もうこれは時間置いて放置するしかないのだ。

今回のVOCのトランスファーは
触った感触もスライドさせた作業工程でも明らかに違いを感じたので、
更に念を押して5か月以上かけた。

全て上手くいって最後にポリッシュしていたら、
そのポリッシャーの熱で事もあろうにトランスファーが膨れ上がった。
その結果その部分だけがものの見事に剥離しました。
えぇ、膝から崩れ落ちましたよ(苦笑)


着実にノウハウが蓄積されるのであれば私も職人のはしくれ、
喜んで精進して実績積んでノウハウ獲得しようぞ。
だが、20年やって全てが「気まぐれ」ではどうにもならない。
ただ闇雲に絶望感と徒労が肩に乗るだけ。

考えてみよう。
もうこの世に存在しないメーカーのトランスファーが今でも売ってる。
これら現存する車体が全部クリアの下にフィニッシュされていたら
それこそもうこんなに流通しないし必要もされないはず。
古(いにしえ)と同じく、このトランスファーというものは
クリアの上に気軽に転写で貼り付けて、
その薄さ故にスタイリッシュに貼り付けられて、
で、薄さ故にガリって削れてしまったりしたら
上からテープ貼って捲って全部取っ払って、
そしてまた再び気軽に貼り直せばいいものではなかろうか。
だから今でもこんなに売ってるんじゃないのか?

このオーナーさんはこの辺の事情凄く理解してるので、
「ならばデカールで造りません?」となりまして。

にしても今一度トランスファー用意しなきゃならないので、
ここでいつもの英国のファクトリーに打診。
「OK,もう稼働してるから大丈夫だよ」との事だったので
サイドのロゴと天面のものをそれぞれ予備含め2台分発注。


本日英国より到着。
スタッフさん、コロナ完治したのかな?
ん?大きなポストカードが入ってるぞ?

裏に色んな国の言葉で「ありがとう」と書いてあった。
コロナで再稼働危ぶまれたの知ってたから
ちょっとこれ観て泣きそうになった。
そうだね、何だかんだで20年間、いっぱいここには発注してきたからなぁ。
NORTON・VINCENT・VELOCETTE・MATCHLESS・AJS・TRIUMPH・
BSA・GREEVES・ROYAL ENFIELD・SUNBEAM・BENELLI・PARILLA・
DUCATI・MOTO GUZZI・GILERA・BIMOTA・MV AGUSTA。
トランスファーのものは予備含め頼んでたから、
ホントに余計にいっぱい頼んでたものなぁ(苦笑)

で、中身確認。



おぃ。

何で両サイドのはいつも通りのトランスファーなのに、
天面のヤツは何も言わずにしれっとデカールなんだよ。
裏側にめっちゃ誇らしげにドイツ製ORACALの表記入ってるぢゃねぇかよ。


ならば全部もうデカールで造れよ。
俺の涙返せ
(´・ω・`)