2021年4月8日木曜日

丸正ライラックCF40。

 これまたレアな車両の外装が入庫。
丸正自動車のライラックCF40の外装です。


こやつです。


昭和35年製造。1960年製っすね。
愛称「スー(Sue)」という名前で親しまれた車輛のようです。

この車体のタンク、
トンネル部分に何と小物入れがついております。

小物入れ開け閉めしてるキッチュな画像(You Tube)

こんな感じで結構タイトに蓋が開閉できる仕組みです。
しかし凝ってますね。
この作り込みの良さが災いして消滅したメーカーたる所以です。

で、タンクはあちこち大小の凹みこそありましたが、
地金のコンディション含め中々程度は悪くない状況。
なので作業写真きれいさっぱり撮り忘れましてんww

で、フェンダーがそれこそ「おおごと」でした。
裏側、錆かくしでシーラーとアンダーコートがべっとり。

うへぇ。。。。。(´;ω;`)


無論このままでは錆が進行していくだけなので、
この先人のやらかした悪行を
ひたすらマイナスドライバーやノミ等駆使して
手作業で剥ぎ落す作業を続ける。

半日で半分まで終わる。
半分でこれだけの「悪事の残骸」が出る
(´・ω・`)



翌日も黙々とこそぎ落とす作業を半日こなす。
右側の艶々してる方が剥ぎ終わってPOR塗ったもの。
しかしこの作業、鬱になる(苦笑)

で、表も酷かった。
何と表面全部がめっちゃ厚付けのパテで出来ていた(苦笑)
多分表にはアンダーコートやシーラー塗れないから。
浮き錆び隠滅に分厚くパテ入れたっぽい。
だってそこまで凹みも歪みもなかったもの。
というかフェンダーなら裏側からドリー回せるから叩くの余裕っしょ。
完全に悪意もってのパテ盛り。
しかも笑えたのがステーにまでパテが入ってた。
この細い4本のフェンダーステーにパテ入れるとは
或る意味ベクトルを間違えたテクニシャンではあるwww
その大惨事の画像は私がパテ粉まみれになったので無論無い(苦笑)



毎回言っているが、ペイントは下地8割塗り2割。
要はどれだけ下地に入念になれるかが鍵。
という事でベースカラーの朱色を先ず塗ってクリアコート。
完全硬化した後に次のロゴ入れに移行する。


塗装は実は必要以上にはあまり厚塗りはしない方が良い。
厚く塗ると塗装同士のスクラムが強くなり、
下地に食いつく強さより勝っていく事になる。
要はちょっとした衝撃で下地に食いつく力より
横の塗装面のスクラムの強さの方が勝ってしまい、
厚塗りの場合チッピングで欠けやすくなるのです。

とはいえ、次の工程でやらざるを得ない事もあり。
というワケで、タンク裏側や小物入れの場所、
燃料キャップの口の部分も「セクショニング」出来ているのであればそこも、
そして塗膜薄い方がラバー嵌め込み易いのは確実なので、
ニーグリップラバーの部分も1回目のクリアで終わらせてマスキング。

さて、ここからいよいよLILACのロゴを入れていくのだが

現存するコンディション極上の該当車は
海外の有名なミュージアムにいるのだが




ウチに来たこの外装、
これ絶対に当時物オリジナルだよなぁ。
海外の「それ」とはフォントもディティールも全然違うんだよなぁ。
あとロゴの位置もこっちと全然違うんよなぁ(苦笑)

海外のレストアは結構大雑把な事ままあるので、
折角の当時物サバイバーからデータ採ったので、
ウチはこっちを完全再生する事にします。

では先ず黒から。
位置もあんな上で斜めじゃなくてこのへん。

黒入れたら

マスキングして1㎜切る位でオーバーラップさせてカットアウト。

で、ホワイト。
終ったら全部剥がして整えて最後のトップコートクリア吹き付け。

で、ポリッシュしたら完成。

希少なモーターサイクルが綺麗に蘇りました。

蓋の部分も可能な限り分解してクリア入れ込んで
再び元に戻してしっかり綺麗に。
ユニクロメッキのレバーも外したついでに磨き込み。
まぁこれはペイント関係ないけどw

タンク裏は全体に剥いだ後POR塗ってあるので、
この複雑な形状でも錆が生じる可能性は今後薄いでしょう。
これでまた半世紀はしっかり生き残れると思います。

下地成形の時とペイントの時に死ぬほど撫で回すので
(微かな歪みとか凹みは掌で感知します)、
なんだか愛着湧いてくるのがこの仕事の辛いところです(笑)
でも終わったら引き渡さなければなりませぬ。
オーナー首を長くして待っておりますし、
渡さないと私もお金もらえませんしw

という事でこの外装も八王子のレストアショップ、
バイク工房蔵の田中さんへとバック。
毎回猛烈に珍車な国産が溢れかえってるショップですが、
おかげさまでこうしてこちらも希少な外装に携わる事が出来まする。
田中さん、残りの珍車も目途が立ったらご用命くださいまし♪
このライラック、走り出す日が愉しみです。