2022年2月22日火曜日

Cum On Feel The Noize。


かなり手間かかったレストアだったので
せめて音楽だけでも威勢よくCum On言っておくw


お預りして作業していたのはMOTO GUZZI Le MansⅢ。
ルマンシリーズの3型ですね。
1型があまりにカッコ良くて2型が何だかヌルヌルした造形になって
その2型が「ウナギイヌ」とか揶揄されたので、
この3型ではまたカッコよくなった感じではあります。
1型に比べて実は造形や塗り分けが複雑で点数が多く、
ペインターとしては少し面倒な相手ではあります。
(決して難しいペイントではなく、あくまでいちいち手間かかる)
余談ですがウナギイヌも今となってはある程度の評価があり、
むしろ2型探してるなんて人も今ではおります。


さて、お預りした外装の先ずはフロントカウル。
PP製なんですが正直最悪のコンディションでした。
まぁ至る所割れてる割れてる。。。。

左取り付け部分かなりエグくクラックまみれ。
更に事故ったのかカウル削れて消失してます。

カウルトップも穴という穴ほぼ全部クラック。
因みにこの外装、ペイントがエアブローとマイナスドライバーだけで
ここまで下地まで全部剥げました。
という事は100%現存の塗装は食いついてないという事になります。
で、この部分だけ左側とか塗装残ってるじゃないですか。
これは過去にこの部分補修されててパテ乗ってるからです。
要はこの部分だけ以前の職人が足付け頑張ったから残ってるのです。
あぁ無情。。。。

笑えるほどクラック通り越して破断してます。。。。

素材がFRPだったらもう少し補修楽だったっす。
PP(プラスチック)なので、溶かし込んでつなげるしかありません。
勿論その際結構な熱かけるので後遺症としてめちゃくちゃ歪みます。
でも熱掛けないと割れた場所表面だけしかくっついてない事になり、
そんな修理では数年でまたクラック発生しちゃいます。
これはかなりヘヴィな修理になるがや
(´・ω・`)

同じ材質のマッチングの良いプラスチック探しから始まり
(結果もっと酷い事故で再生不可能になった同じ車種のカウルもらってきた)、
それをチップにして溶かして裂け目を埋めていき、
歪みまくった場所をパテで成形していく。

取り付け部と欠損は流石にPP造形は出来ず、
ここはエポキシを盛り上げては削ってを繰り返し再生。
これ預かったの夏の終わりだったんですが、
こういう地味な修復やってたら年末のロッドショーが始まり、
ここまで仕上げるの年末に至ってまいました(苦笑)

タンク横につく羽根飾りみたいなカウル。
こっちは割れ欠けはあんまりなかったですが、
過去のペイントの足付けが適当極まりない作業されていたので、
全然食いついてない&硬化剤不良なのか脱脂でも戻る。
そんな上には塗れるワケもなく、全部手でペーパーで落とす(苦笑)
このパーツ、めちゃくちゃ複雑な格好した造形なので、
リペイントの時の職人が手ェ抜かれてるケースが凄く多くて、
入り組んだ奥の部分とか全然食いついてないケース多いんす。
過去のヤロウが手ェ抜いたばかりに私がとばっちり喰らいます
(´;ω;`)

クラックは数か所程度だったので、
あのわやくちゃなフロントカウルに比べれば楽勝です。

シートカウルはほぼ原形留めていましたが、
こいつはペイントの下地が最悪。
このアイボリーのプラスチック素材、70年代車に多く採用されてましたが、
こいつ経年劣化で上の塗装に水疱出すんすよ。
「どうせ塗装するからプラに紫外線来ないよね」でこの色だったんでしょうね。
はい、ばっちり塗装膜通過して日焼けしますw
それでペイントが水疱みたいに浮いてくるんです。
国産だとCBのエクスポートシリーズやCB500のサイドカバーとかこれです。
これも対策として下地まできっちり除去して
現行の肉厚のサフェーサーで次に日焼けさせないようにしなきゃなのです。

という事で可能な限り剥きます。
とはいえ相手はプラなので追い込み過ぎると造形変わっちゃいます。
剥離剤もブラストも勿論NGっす。
要は地道に手でこそぎ落とせという事です
(´・ω・`)

でまぁサフェとベースカラーの赤は何もオモロないのですっ飛ばします。
このオレンジと黒のグラフィック入れていきます。
多分当時純正はこれカッティングシートで販売されていたんでしょうけど、
もう40年以上経過してるので流石にもう流通してません。
ですのでペイントでこれを再現していきます。

その前にデカール貼っておくか・・・・
アッーーー!!!

デカール古すぎて保護してた和紙の糊全部食いついちゃてるよ
(´;ω;`)

これね、すぐに使うのなら問題ないんだけど、
長期保管する時は早めに上の和紙のシートだけ剥がしてさ、

弱粘性のフォイル(透明なバージョンの保護シート)ロールで売ってるから
それに貼り直してさ、

でもって余った余計な部分ハサミでカットすればさ、
向こう何十年でも保管可能な状態で保てるから、
ストック持ってる方は早速それやっといてください(苦笑)

因みにこの透明シート、左端みたいにちょびっとずらしておけば
将来それ貼るペインターも(或いはご自身でやるかもですよね)
剥がす際に凄く助かります。
みんな、誰がやるかはわからなくても未来に優しく、しようぜww

で、べっとり残っちゃった糊は中性洗剤の水に2日程付浸し。
無理にシリコンオフで擦って除去しようとすると
デカールの色のシルクスクリーン痛めてThe Endになる可能性もありますので。
ま、これでまた納期先に延びます
(´・ω・`)


3日後しっかり脱水してやっとこグラフィック入れ。
先ずは表の黒とオレンジ。
これ塗って一旦マスキング全部剥ぎ取る。

で、次にヘッドライト内の部分とカウル下側の黒のマスキングを。
一度に出来ないのよ、複雑になり過ぎて(苦笑)

カウル裏側のヘッドライトの部分もマスキングで塞いでおく。
空いたままだと結構な乱気流発生して、
赤の部分に黒いミストが付着する危険性がかなりあるのです。

で、やっとこ黒入ります。

この下の部分とかもう赤で良いんぢゃね?とか思っちゃいます(苦笑)

まぁ取り敢えずこれでマスキング全部剥いでクリアコートっす。
この部分は艶アリセクションになります。

で、このルマン3の最も面倒なのが塗り分け。
カウルトップと裏側は半艶黒なんすよ。
なのでここでまた表全部マスキングして塗らなきゃならんのです(苦笑)

もうマスキングに集中してて写真撮り忘れたよww

ここまで手間と作業多いのに
仕上がりはそこまで手間かかってるようには見えない
(あくまでもカスタムペイントと比べての話ではありますが)

この羽根みたいなカウルも微妙に手間のかかるペイントで、
上半分は艶アリの赤、下側と裏側が半艶黒なんす。
しかも塗り分けの境界線は特に基準もなくあくまで適当。
凝ってるクセに最後は匙加減(苦笑)

私はこんな奇妙奇天烈な外装の造形は
このMOTO GUZZIとエキモのケンタしか思い浮かびません。

シートカウルのエビ反りっぷりも
これがGUZZIじゃなかったら単なる族車ですwww

どうにかレストア完了しました。
長らくお待たせしました。


あっ、奇妙な形のメーカー、他にもあったなw
私がいつか欲しいと思っているRUMIのフォルミキーノ(笑)