2020年11月28日土曜日

アルピナ正統派。

T様よりご用命頂いたBMWアルピナカラー。
水色・紺・赤の例の3色ラインのオーダーです。

実はこの細く隣り合わせの3色ライン、
エアブラシで施す方が手間も時間もかかります。
筆引きの方が度胸1発で早いです。
でも今回の車体はオールドスクールではないので、
きっちりかっちり小綺麗にまとめるべく
エアブラシでラインを施していきます。

先ず水色入れるのに他の2色の部分マスキングして。

次に反対側の赤を。真ん中の紺は最後に吹きます。
何故なら赤は仮に紺がわずかにはみ出したとしたら
それを消すほどの隠蔽能力がないからです。
ここをよく閲覧されている方々でしたらもうご存じだとは思いますが、
赤と黄色は下地に白やピンク、灰色や赤さび色、黄土色などを先に施します。
下地に黒い部分が残っているといつまで吹いても隠蔽出来ないのです。
下地の色のチョイスは赤の「発色」で決めます。
ビンテージ感のある重みのある赤にしたい場合は赤さび色や灰色、
イタリアンの様な真紅の場合は白やピンクといったチョイスですね。

なので紺は一番最後です。隠蔽力ありますからね。
そして両端先に確保する事で3色ラインの「色抜け」を防ぎます。
オーバーマスキングで起るエアブラシで塗れてない部分出来ちゃうの防止っすね。
なので紺塗る時は水色と赤を0.1㎜程敢えて残してマスキングします。
こうする事でオーバーマスキングは防げます。

が、この残しマスキングはかなり慎重になります。
わかさ生活のブルーベリー貪りたいです。
目がめっちゃやられるww

マスキングの貼り直しも3回やりますので、
最後までマスキングしておく部分は通常以上に丁寧に処理してます。
ライン次の入れる時にマスキング剥がして
その必要のない部分まで一緒に捲れちゃうと結構ストレス掛かりますからね。
およそ8時間ちょいの仕事をなるべくストレスフリーで行う手際は
かなり大切になってくるのです。

20年以上この仕事やってても
このマスキング剥がす時は結構ドキドキしてます。
とは言ってもワクワク感からくるドキドキというよりも
「無事に何事もなくフィニッシュしてますように」というドキドキですかねw

うん、いいね♪
ではラストのクリアコートです。
これもアイボリーやホワイト系は埃の付着で台無しになる可能性大なので
ペインターとしてはメッチャストレスなんですけどもね(苦笑)

3㎜幅3色ライン施したマスキングの残骸。

どうにか無事に終了。
たっぷりブース水浸しにしてビニールカッパ着て万全を期して挑みますが
それでもクリア4発の最中に埃の付着はもう「運任せ」です。
神信じてないけどまさしく「神頼み」です(苦笑)


昔、自動車屋の鈑金屋にいた時、
とある車の左側面パネル2枚補修ペイントしたんですが、
引き取りの際、その車の夫婦がルーペ持参して
1時間以上塗ったパネルをチェックされた事がありました。
その行動にもかなり驚きましたが、夫婦でおよそ1時間かけてチェック。
「あの、埃が6粒這入ってるんですけど」、と。
新車で買って大切にしてるので塗り直してもらえますか?、と。

ちょっとお時間頂いて、その夫婦に新車時のパネルもルーペでチェックしてもらいまして。
すると塗ってないパネルにも埃見つかったんですね。
「地球上で空気利用して塗っている限り、新車時でもこうなんですよ。
ですので仮に塗り直しても別の場所に5粒程は侵入すると思いますよ」、と。

ご納得頂いて無事にお帰りになられたのですが、
「新車にはない」「人が塗れば何かやらかす」
と、あの夫婦にはもう先入観ががっつり入ってたんだと思います。
とはいえ、やはりどこまでが「許容」で、どこまでが「不可」なのか。
ペインターは常にこれと闘ってる気がします。
その答えは20年以上塗ってても見つかっていません。


ただ、年に1度くらい、何一つ微細な付着もなく終わる個体があります。
その時私はそれを見て「神に選ばれし外装だ!!」と思わず叫びます。
全然神様信じてないクセに(笑)


T様、永らくお待たせしました。