7月某日。山梨の46WORKSにプロジェクトクルー全員集合。
こちらの車両のオーナーは伊勢谷友介氏。
これが今年の年末のホットロッドショーのプロジェクトになります。
オーナーの伊勢谷氏も含めこの日がプロジェクトの初顔合わせ。
あれこれと打合わせをしていきます。
「独創的なカッコいいの創りましょう!!!」
伊勢谷氏何を撮っているのかと思えば
Newプロジェクトに急遽参加したカエル(笑)
そんな感じでプロジェクト、スタートです。
まぁ先ずはいつもの如く下地造りからです。
その後バンバンに日常で使える車体とはいえ
一度は水銀灯の下で入場料を払ったオーディエンスに観てもらうショーカー。
各部まで細部に至るまで徹底的に造り込みます。
インド製のヘインリッヒのレプリカタンク。
こいつが造形上一番厄介でしょう(苦笑)
エッジとかタガネでバシバシ叩いて終わりにしてるでしょw
ニーグリップの大うねりとこの荒々しいエッジをスムージングしていきます。
カンチレバー式になっているワンオフのスイングアーム。
純正の部分であるシャフト部分はリブが立って補強がされているので
勿論補強を削っては問題ですので埋める事にします。
最初の2か月はずっとこのフルスクラッチ作業の毎日デス。
エッジを優しく叩いて丸めて(とはいえもう形になってるから相当気を遣う)
徐々になだらかな優しいラインになってきました。
一度サフェーサー入れて全体のラインを観ます。
この時点で気に入らないラインがあれば勿論やり直します。
ネック周りも全てスムージング。
そう言えばレーサーが多い46さんトコの車体でスムージングやるの、初めてだね。
ケンタのところやツネちゃんの車体だと当たり前にやってきたけど。
最後の最後の絶妙なアールや歪みはサフェーサーの研磨でとります。
勿論サフェで取れる範囲はごく僅かなので
サフェ前にほぼ取れてないと話になりませんが(笑)
これで美しい曲線の融合したラインが出ました♪
先にフレーム渡しておかないと46さんも仕事にならないので
フレームだけは9月中に仕上げてお渡しデス。
溶接の集合部だけを意図的に濃い目にグラデーションかけてあります。
艶めかしさを演出する効果も狙ってはいましたが、
先に渡したブレーキのドラムとハブが強烈な純白なのです。
鋳物の肌も全部スムージングしてペイントしたそれが
マイセンの陶磁器の様なニュアンスに観えたので
こちらのフレームは熱をかけて真っ赤になって窯から出て来た
ベネチアンガラスやボヘミアンガラスをイメージしたので
わかりやすいグラデではなく見ようによっては光の加減でそう観えるかのような
物凄い絶妙な「Fog(霧)」の様な色の変化を目指してみました。
窯の中から出て来た真っ赤なガラス、あれ好きなんですワタシ(笑)
琉球ガラス村とか行くとかぶりつきで2時間以上観てます、ワタシw
考えてみると真っ赤になった鉄でもいいんですけどねw
フレームはこれにて終了。46さんへとバトンタッチデス。
タンクは先ず下地にグレーをペイント。
一旦クリア掛けてラインの検討会です。
伊勢谷氏とFBのメッセージと携帯電話の直電駆使して
夜中にラインの位置をあーでもないこーでもないとやりとり。
前のショルダーが丸く落ち込んだこのラインで決まりました。
フレームと同じ赤紫でグラデーション入れてまたまた一旦クリア。
ここでエンブレム、入れましょうか。
「再」のこのマークが伊勢谷氏が代表を務めるリバースプロジェクトのロゴ。
これをR9Tと同じく螺鈿で施す事になったので
自分の塗ったペイントを彫刻刀で掘り下げてアワビ貝が嵌るようにします。
アワビ貝の肉厚まで掘り下げました。
何回やっても自分のペイントに彫刻刀でメス入れるのはお腹痛くなります(笑)
アワビは下地が黒くないと発色良くならないので
この掘り下げた部分を黒く塗っておきます。
貝殻は硬いので曲面には全く追従しません。
なのでモザイク状に適当に折ったピースを選んで嵌めていきます。
でも実際この方がアワビは効果的です。
貝によって緑発色とピンク発色がありますので
これらを交互に合せていくと非常に綺麗です。
彫ってるので溝がありますから横置きにしてクリア挿して埋めてあげます。
左右あるのでこれだけで2日必要ですね(笑)
段差埋めのクリア両方乾いたら念の為ここでまた一旦クリアです。
カスタムペイントってのは通常のペイントの5~10倍はクリア入ります。
だから値段も張るのね、と解釈戴けますと幸いですw
タンクの様に凄いギミックの入らないシートカウルは終わりましたので
こちらも待ち受けているRyozzy君にバトンタッチ。
この業界、一番どこにでも関わってて時間要して
一番仕上がりを待ち望まれてるのがペイント屋です。
えぇ、頑張りマス(笑)
取りあえず鏡面にはなった再マーク。
当たり前ですがこのままではあまりに貧相。
この工程でこのマークに縁取りを入れてあげます。
アワビ貝をマスキングしてその周辺を1㎜開けてマスキング。
画像では剥がした後ですがタンク前面をビニールで覆ってエアブラシ。
マスキング作業30分、ペイント1分。
下準備に9割強。ペイントなんてそんなものです(笑)
さてさて、外周剥ぎました。
螺鈿とのご対面でゴザイマス♪
ピンセットで御開帳~
イイ感じですがピンセットの右斜め上、
マスキング処理で0.2㎜程欠けてますね。
勿論この後ここだけマスキングし直してやり直します。
華やかに観えますがカスタムペイントとはこういうものです(笑)
うん、OK♪
ここでまた一旦クリアコート。
ペイントとはこういうものry(もういいですねw)
最後に伊勢谷氏からオーダーのあった屋号をタンク上面に。
古いイタリアやフランスの映画のエンドロールの様な感じで。
なので少し間隔開けて字体も細く繊細に。
1976はこの車体の製造年と伊勢谷氏の生まれ年。
エンドロール最後の2015はこの車体のプロジェクトの年。
そしてその下の大きな矢印はそこに跨るのこそこのプロジェクトの主、
Concepted byYusuke Iseyaそのもの、という証。
螺鈿も完全に鏡面に収まりました。
映ってる人物には問題ありかもだが
映り込みにも何ら問題、無し♪
かくしてワタシの受け持ちパートである外装一式、終了。
かくして11月初旬、外装を46さんトコに持ち込み。
伊勢谷氏も現物確認に山梨で集合。
凄げー喜んで戴けました。
この瞬間は職人にとって本当に嬉しい時です。
幾ら職人が満足してもオーナーが喜ばなければ
ワタシは仕事の意味が無いと思っておりますゆえ。
ワタシが職人と自負はしていてもアーティストだとは思っていない理由も
そこに重きを置いている仕事への姿勢からだと思います。
あくまで皆さんの欲しいものを具現化する為の技術。
ワタシが出来るのはそれだと思っております。
そんな伊勢谷氏を収めるプロカメラマンSU-ZU氏を撮るワタシ。
写真でプロに勝てるワケがないのでワタシはこういう姑息な事しますw
因みに伊勢谷氏が被っているヘルメットもオーダー戴いたもの。
こちらはデザインがシンプルだったので制作レポート無しでちゃっちゃと仕上げちゃったのですが
「制作過程を愉しむのがいいんですからー」と伊勢谷氏に言われてもうた。
ホント、サーセン(´・ω・‘)
実はもう1個、こっちは相当手の込んだメットもあるので
こちらはロッドショー終わった後にでもゆっくりとまとめますw
パンツの色まで車体に合わせて来たとしか思えない伊勢谷氏(笑)
こちら、6日のロッドショーで46WORKSブースに展示されますので
よろしければご覧くださいませ♪
で、46からはもう1台。
こちらはKTM直々のプロジェクトによる46制作のレーサー。
もはやカスタムの領域を超えたメーカーから託されたプロダクションと解釈します。
来年本気でサーキットで戦う「本物」。
メーカーならそうしたであろうスキームや色をどう纏めるか。
何気にSTUPID CROWN16年目にして実は物凄く難しい題目だったかもしれません。
こちらは当日まで全容はお預けです(笑)
是非両方御覧戴ければ我々は嬉しい限りでゴザイマス。
6日は谷保天満宮で旧車祭り、横浜でホットロッドショー、
袖ヶ浦でレースと各所でイベント三昧です。
横浜に行かれる方、ワタシもお昼過ぎからパシフィコ行きますんで
お会いできれば是非に♪