2014年6月13日金曜日

久しぶりに連投してやる3。

Oさんの持ち込んだ陸王。
80年代頭まで実働だったのが信頼出来る筋の証言で確認出来てる個体。
日光のモロにあたる場所で展示保管されていた為
左サイドだけ猛烈に劣化してるこの個体。
Oさんが「出来ればこのままの風体で活かせるなら」と持ち込まれる。

今、敢えて正直に言います。
昨今のオリジナル主義、大嫌いです。
というかオリジナルが嫌いという訳ではありません。
昨今の「未再生原型ほど偉い」という風潮に乗っちゃった
そんな輩が発するオリジナル主義が大嫌いです。

ワタシのようなペインターは特に旧車に精通しているのであれば
先ずは未再生云々よりも
この持ち込まれた「もの」が
今後もこのまま「もの」として機能出来るか否かで判断します。
折角のビンテージパーツでも穴が開いていればタンクとして使えませんし
朽ちていれば勿論使えません。

でも最近、未再生のサバイヴァー個体の方がもてはやされる風潮があります。
無理して乾燥したアメリカ西海岸から持ち込んでその体で使用されて
凄く当時の風合いのあるリアルサバイバーだともてはやされて
でも日本は高温多湿だからすぐに朽ちていっちゃって
挙句に流行が終わって捨てられるなんて
半世紀生き残ってきた「物」に対して甚だ失礼な事だと思っています。

確かにサバイヴァーな個体はえも知れぬ魅力はありますよね。
それはワタシも十分に認めます。
ただ、それは今後もそのまま生き抜いていけるか否かも大事だと思うんです。
Oさんの持ち込んだこの陸王は外装こそここまでヤラれていますが
ずっと室内保管だったという証明、そしてそれに基づくダメージの具合、
そしてこれがずっとあった「佇まい」というオリジナルへの立証があったからこそ
ワタシはこのダメージの上からコーティングという難しい技法で挑戦したのです。

今集められたビンテージパーツの集合体で
あたかも昔からあったような個体を丁稚あげるのが今風潮としてあります。
正直どうなんだろ?ってのがワタシの見解です。
そんなサバイヴァーに跨ってご満悦の人見ると
天邪鬼なワタシは「免許見せて~」って言っちゃうのです。
そして大型取って〇年とか観ちゃうと
「そっかー、頑張ってんだ~」とかしなくていい喧嘩売っちゃうのです(苦笑)
エストレアとかSRとか現行でこういう技法取るのはギャグでもありますし
魚肉のおじちゃんのCBみたいなのはギャグでいけるものなので
ワタシはアリだと思います。
あとクラシックモーターサイクルが不慮の事故でパーツ欠損した際に
どうしてもこの年式に合わせたペイントで再生したい、というそれは
そんな技法でアクシデントを無かった事に出来る喜びに浸れるのですが、
ビンテージにビンテージで「はく」をつけるようなでっち上げは
正直どうなんだろ?ってつくづく最近思うのです。

多分、今回の怪電波は凄い敵作ると思います。
昨今の流行に対して超絶NO突きつけてますからね(笑)
でもその技量持ってて昔から然るべきところで使ってた身からすると
この暴力的なまでのオリジナル至上主義が気に入らないのです。

こんな内容で書き殴ったら客絶対減るんだろうなー、と
実感しつつも書いております(苦笑)
本来の目的はペイントは地金の保護でもあります。
そういう意味ではレストアペインターとしては
本来の「物」を維持させてあげる為の仕事をないがしろには
したくはないのです。

話をこの陸王に戻しますと、
外装はこのようにガビガビにやられた状態ではありましたが
奇跡的に中は悪くは無く、外の剥がれもそれ止まりで、
証言通りに室内保管であったのが実証されています。
要はタンクとして今後も活躍できる「物」としての使命感が
このままでも維持継続出来る状態だったのです。

全部剥離して地金を磨いて下地を完璧にして
新たなレストアペイントをした方が正直数倍も楽です。
このまま残すというのが究極の道楽で我侭で
究極に手が必要なものだというのを認識してもらいたいのです。
そしてそれは望めば出来るものではなく
こういう奇跡的条件・状態あってこそのプロジェクトだという事、
そしてこの様な作業はオールペンよりも遥かに金額が掛るという事。
これを承知して初めて成し遂げる技法であるのです。

オリジナルのメケメケのペイントの上から
錆止め機能のあるコーティング剤を塗布していきます。
段差が埋まるまで、生乾きのうちにでないと食いつかなくなるので
8時間ごとに工房に降りては塗布していきます。
全部で半月それを繰り返したので、半月は家から出ても
8時間で戻れる範囲で戻ります。
乾いてしまって次のコーティングが食いつかなくなってしまっては
全部が水の泡になってしまうので、
まるで新生児の授乳時間の様な強制的な間隔で
半月ずっと8時間ごとに塗布して塗膜をつけていくのです。

なんでそこまで塗膜を付けるのか。
簡単なコトです。
下地をオリジナルのままという事は
この剥離の凄い状態のまま閉じ込めなきゃいけません。
要するに下のこのカラーリングを砥ぎつけられないのです。
砥いでいないということは全く食いつかない。
容易く剥がれてしまうということです。
塗料は下への食いつきの他に横(塗料)同士でスクラム組む様に
横でも密着しようとする特製があります。
下に食いつかせる術が無いのなら横のスクラム力に頼るしかありません。
だから何十コートもひたすら塗り重ねていくのです。

最後に艶加減をコントロールしてフィニッシュします。
ミュージアムに収めてる車体も同じ技法で施工しています。
未再生原型で無いのがバレてしまうので
どこのミュージアムのどの車体かが勿論ここでは控えます(笑)

金額的にかなりいきますよ、という先の告知にも関わらず
最後には
「今回は非常に有効なお金の使い方が出来た気がします」と
そこまで仰ってくださったOさん。
ワタシの方こそ本当の意味でのレストアに関われた気がします。
本当にありがとうございました。

因みにオーナーのOさん、
こんなイカシタちゃりで引き取りにきてくれた。

訊けばやっぱりというか
ウチの近くのFUNNYさんで購入したらしい(笑)
立川、いかしてるぜ♪



何かあまりにも毒舌になっちゃったのでw
同じ進行の時のブースの画像。
左から1936年VELOCETTE、
ダメージペイント中のW650、
超エヘン虫状態のトゲトゲREBEL、
そして今回のオリジナルペイント残しの陸王。
頭の中がおかしくなるわwww


こっちはBELLのMOTO3に施した当時風ダメージペイント。


このメットは昨年ペイントしたKさんのKHに合わせたもの。

同じ時に同じようなオーダーが重なるのはウチの常。
最近旭日旗オーダー、多いです。
個人的には勿論嬉しいです♪



もう余計な事書かずに画像だけ貼り付けていく事にしたwww


こんなのもやってました。
カート・コバーンで有名なこのモデルのペイント。

サンバーストに鼈甲のオールディースなこの組み合わせを
オーナーの希望により

キチ〇イペイントに変更(笑)

超PUNKISHでいいんじゃないですか♪
音楽ってのは本来自由なんだし♪
これでぶっ飛んで演っちゃってください!!Tさん(笑)