2022年2月8日火曜日

Wake Me Up。

ホント長らくお預りしていたN様のDUCATI外装一式フルレストア。
先ずはカウルのクラックの修正から。
この90年代のDUCATIってプラスチックじゃなくて
BMWみたいな成形インジェクションのFRPなんすね。
どうりで堅牢で重いワケだ。
おかげさまでFRP補修がかなり容易に出来ました。

同じFRP同士なので食いつきは抜群です。
裏側からきっちり補修。

もうこの年式だとカウル裏側の断熱材もメーカーから出ないでしょうから
そこはしっかり保護しつつ補修していきます。
この部分断熱材で覆われてないので大丈夫だとは思いますが、
LツインのDUCATIの大排気量の熱は凄まじいので、
念を入れて補修した上に耐熱エポキシでカバーしていきます。

さて、裏側の処理終わったので表やっていきましょう。
このDUCATIのデカール、
やたらと段差あるなぁと思いながら慎重に剥離したら、
その下から更にデカールが出てきました。

という事は一度塗り直されてますね。
で、前のペインターは最初のデカール除去せずに
その上にぴったり合わせる様にデカール貼り直した、と。
確かにそれならデカールの位置ずれないけども(苦笑)

こっちは「C」だけくぼんでると思ったら、
Cだけオリジナルのデカール残すの失敗したみたいねw
ま、無論上も下もどっちも綺麗に除去しましたww

で、裏側の断熱材死守すべくきっちり保護。

外装で唯一スチール材質のタンク。
これだけは徹底的に下地剥きましょうかね。

コンディション悪くはないとはいえ何気にもう30年物。
やはりというか元から塗装の薄い裏側は点錆が多数。

地金まで剥いて磨いてからPOR15処理。

うん、これで半世紀は問題ないでしょう。

表は徹底的にポリッシュ入れて酸化被膜形成させる。

因みに何度も言ってますが
ウチではスチールの剥離は余程の困難なケースでない限り
剥離剤は用いません。
剥離剤を使うと水で洗い流さなければならず、
鉄は露になって水に触れると必ず錆びるからです。

たとえ粉塵で工房が粉だらけになろうとも
鉄と向き合う時は絶対に空砥ぎで行うのが私の方法論です。

さて、カウルの下地もようやく終わり


シートカウルも下地完了、サフェーサー吹き。

フロントフェイスも然りです。

で、少し悩んだのがデカールの色味とメタリックの輝き。
勿論純正デカールは既に廃番欠品。
複製はいつものVINYL CREATIONの江原さんにお願いしたのだが、
オリジナルと近い色味のカッティングシートだと
メタリックの輝きが足りない。
似てる色味の方だとメタリックのきめが細かいのだ。
シートカウルの細いデカールはそっちでも良かろう。
でもこっちの大きなDUCATIロゴはやっぱ目の粗いメタリックにしたい。

で考えた結果、こっちの方は切り抜きのアウトラインも一緒にもらう。
ロゴもアウトラインも一緒に貼って、
その上からキャンディブラックでトーン仕上げようという作戦。
これなら色調合わせつつメタリックの輝度も復元できる。

ま、私ペインターなんで(笑)

合せるべくカラーチャート片手に色調合わせ。
これ位トーンを黒味に寄せれば純正と同じ色味になってOK。
とはいえ現物1発勝負だから結構プレッシャー強いw

こうして数年お預りしていたプロジェクト、完了。
2000年代入ってからの攻撃的な鋭角なドカもカッコ良いですが、
90年代のなだらかな曲線の時代のドカもこうしてみるといいっすね。

現行の年式の攻撃的なフォルムのヤツはエッジが鋭利で
次のアクションの為の水砥ぎとか慎重にならないと
エッジの部分砥ぎ過ぎて下地出ちゃうトラブル起きがちなんですけども

こっちは砥いでいて手指が滑るような抗わない曲線で構成されていて、
同じメーカーの車体でこの差は触れて凄く実感しました。
実際のデザイナーは違いますが
何だかルイジコラーニの曲線っぽいなと思いました。

コラーニと言えばこれですね。
つくば博の芙蓉ロボットシアターにいたこの子達。
なだらかな曲線でMale/Female表現できるデザイナーでしたね。



相当なお時間戴いて、その間何も言わずお待ちしてくださったNさん。
実は以前私と同じ板金塗装で塗装をしていた(車の)方。
年跨ぎでは済まない時間を要したにもかかわらずお渡しの際に
「おつりは要りません、むしろ安いと思ってますので」
と職人冥利に尽きるお言葉戴きまして。

元同業者からのこの有難いお言葉、
ここ数年の中でとても嬉しいプロジェクトとなりました。
私とてお預りしたものは順当にお出ししたいです。
が、レストアはやはり下地を確認して初めて発見する事象があります。
それ故中々当初の予定通りに進むものではございません。
そういうプロジェクトが重なれば重なる程に更に設定が難しくなります。
ご理解頂ける方からのこのお言葉は本当に沁みました。
N様、永らくお待たせしました。
この度はご用命ありがとうございました。
近場にいらっしゃるのでGUZZI出来上がったらどこか走りに行きましょう♪