2014年6月13日金曜日

久々に連投してやる4。

春先に納品したVelocetteのKSS。
オーナーのN氏がお披露目がてら来店してくださいました。

実はそれだけではなく
やんごとなき事態が起こって緊急来店だったのです。

塗り終わってタンク装着する際
誤ってタンクの上にガーターのステムを落としてしまったそうで。
確かにタンクにがっつり傷がついてしまってます。
オーナーのN氏の落ち込みっぷりが酷かったので
「一度見せてみてください」で
この度来店した次第。

理解りにくいけど画面の長いボルトがガーターのステム。
ガーターは構造上2か所ボルトマウントになるので
奥の方のボルトの締め忘れでこれがタンクに落ちてしまったようで。
N氏が慌てて丸見えになっちゃった下地に黒を筆で挿したようですね。
クリアはかなり厚いのでもしかしたらどうにかなるかもしれませんね。
やってみましょう。

丁寧に傷の上にだけクリアを挿し込んでいって強制乾燥。
これで平面になってくるまで2回程同じ工程を繰り返します。

他のパーツが熱でダメージ受けないように
溶接時に使用する防熱シートでハンドル廻りはカバーしてから
近赤外線で炙ります。
大体70度前後まで上げますので結構熱っちぃです。

うっすらと傷跡が形状として残りましたが
取り敢えずは今回は終了。
クリアの塗膜は十分にありますので
落ち込みを時間置いて十分に待ってから
また1年後くらいにクリア挿して修正しましょう。

オーナーのN氏とワタシでなければ
早々気付かないレベルまでは治ってますので
N氏、また来年にでもお越しくださいませ。



何故だか穴開きタンク祭りが始まった我が工房。

手前左からDSK、奥がW1、右がBMWのR60、
そして下がBMWのR65。
見事なまでに全部アナーキー。
水槽に浸してエア入れると見事なまでにブクブク泡粒。
特に右のR60が一番酷かったデス。。。。

タンクの一部は過去にも真鍮ロウで修理された形跡アリ。
でもここまで腐食してるとロウ付けする際に施すフラックス(強酸性)で
地金が腐食して結果次々と穴が開通していきます。
自分、時間が無かったのでこの一番酷かった箇所は
ツネちゃんに外注で依頼して新規造り直してもらいました。
ありがとうツネちゃん。助かった♪

ほら、こんな感じでもうあちこち穴だらけ(苦笑)

タンクがこんなだと勿論他の外装もメケメケ。
リアフェンダーは裏のスタビライザー(補強)で二重構造の場所が
完全に腐って無くなってましました。。。。

こちらはJOINTS出店車輛の終わったので
ワタシが鉄板埋め込んで溶接して修正。

このス穴をどうにかしたかったんでしょうね。
こちらの65は中に樹脂流し込まれてました。
しかも錆止め剤塗ってる上から。
ぜってーそんなの食いつかねぇだろ(苦笑)
安易にタンク内に樹脂流し込むのだけは
絶対にやめた方がいいですよ。
1時間徹底的にエアブローと長いドライバーでホジホジして
何とかここまで取り出しました。

猛烈に作業してたので途中の画像がほぼ残ってません。
BMWのR60、完成です(笑)
ここまでビンテージになると、お客様から承諾得られるのであれば
本当ならフェンダー裏のスタビとか全部一回リベット解除して
隈なくブラスト当てて防錆処理して徹底的に下地やってから
そこでいよいよ塗り作業へ、というのが理想です。
今回は時間の都合上、4か月という短い間で作業しましたが
まぁその中でやれる事は全部やったので良しとしましょう。

因みに60は左パッド部分が小物入れです。
この辺のBMWはレストアでは殆ど黒に白子持ちになるのですが
アイボリーは珍しく、見た目も何だか新鮮です。


レストアの横でカスタムペイントも進行していきます。
白黒半分ツートンで白は古紙の様な古布の様な質感で、
中世ヨーロッパの活版印刷の書物に出てくるような挿絵っぽい
聖書のような挿絵を入れて欲しい、というオーダー。

最近、ウチは紙っぽいとか布っぽいとか
海から引き揚げたっぽいとか
「これ、材質鉄じゃん」と如何に突っ込まずに仕事するか。
何かそんな兆戦ばっかしてる気がします(笑)

ここまで彫り出すのに5時間以上掛ってます。

金沢箔の色違いを駆使して
箔画で油絵っぽい重厚感出せないか、というのを
ここ何か月か探究して何とか成し得たので
それを今回これで試してみる事にします。

普通リーフ(箔)は紙状のものをキチンと貼り付けて
すんとした輝きを得るものなのですが、
わざと先に粉々にした箔をまぶしてすぐにしごいて定着させて
更に圧掛けて擦り込んで擦り切れを出していく、
そんな手法で油絵っぽく違う色の箔を足していきます。

マスキングテープで覆われていたので
実際捲ったらどんな感じなのかは
もう完全に自分の頭の中の想像力に任せるしかありません。
かなり心臓バクバクさせながらマスキング取ると。
うん、狙い通りにいってますわ♪

一度段差取りでがっつりクリア入れて
乾燥した後に平滑に砥ぎ上げて
最後に肌調整でファイナルのクリアをコーティング。
半分艶の無い状態でフィニッシュさせてから
特に黒のセクションを部分的にポリッシュ入れて
長年の経年で艶引けした感じを演出します。

白い方のセクションは全くポリッシュ入れてません。
古布でテカテカしてると気持ち悪いからです。
古布でテカテカしてるのは着古した中学生の学生服のズボンだけでいいですw

この布ペイントも実は5色使って表現してます。
古布は色んな色で汚れてるのが「リアル」ですから。
でもドブみたいな色が調色台に何個もいる風景は
煌びやかに観えるカスタムペイントのダークサイドを観ているようで、
テストピースに吹き付けては
「うん、いいドブ色だ♪」とご満悦な自分の姿に
我ながら大変切なくなってしまいます(笑)

まぁこんな感じで箔画モチーフのタンク、完成です。


早速SHOPにタンクを持ち込みます。
そうです、こんなメチャクチャなオーダー出すショップってのは

もう佇んでる車体からしてエキセントリックです。
主のケンタは更にエキセントリックです。
ってかこのディガー、低過ぎだろ。
物凄げーポジションだ。

手前はなんと125。イカレてんなぁ♪
奥のティファニータンクのSR、遂にオーナー決まりました。
嫁ぎ先で可愛がってもらえよ~

ゴミにしか観えませんが
これがディガーに生まれ変わるのです。
でもその前に鉄屑屋が来たら間違いなく持っていかれます。

装着。

うん、カッコいいね♪
ケンタ及びオーナー様、お待たせしました。
かなり試行錯誤しましたが
結果、ワタシの中でまた一つ手法が増えましたデス♪