2015年9月30日水曜日

TERROTという名のモーターサイクル。


3月中旬、とある方よりメールを戴く。
「1930年のTerrotというモーターサイクルなのですが、
この度これを綺麗にフルレストアしたくお願い出来ますでしょうか?」


Terrot Motorcycle。
戦前に存在していたフランスのメーカーです。
フランスのモーターサイクルというと日本ではほぼ知名度もありませんが、
どうやらフランス国内では大切にされている個体が多いようで
部品もあまり困らない方だそう。
どことなく戦前の英国車に似ていると思われる方も多いでしょうが
考えてみれば世界の市販モーターサイクルの始まりは
プジョー製エンヂンを使った英国車だったので
そういう意味ではこちらの方がパイオニア、とも言えるかもしれません。



しかし日本国内には何台存在しているのでしょうか、このTerrot。
因みに読みはPierrot(ピエロ)と同じく後ろのTは発音しません。
「テロ」と読みます。
何だかネットの検索で物騒な方で引っ掛かりそうなネームです(苦笑)



というワケで引き取りに向かったのが4月。
ここからオーナーO氏とワタシで長期レストアプロジェクトを開始します。




立川までやってきたTerrotをO氏と二人で外装をバラしていきます。
特殊な外し方の場所もあるのでO氏より伺いながら。



この年式の車体は外装が下りるとボードレーサーに観えるのはいいですね♪




かくしてほぼ外装の全てが降りて長い対峙の始まりとなりました。




オリジナルに忠実であろう場所をO氏より確認しライン位置など採寸。
ノンオリジナルかもしれない個所はO氏がこれより調査する、という形で。




前にライン引いた方が誰なのかも知っているので
それもまたこの車体のヒストリックを新たに背負う気概で
こちらもだいぶ身が引き締まります。




タンクに関してはこのカシューで上塗りを繰り返された一番下に
鮮やかなブルーが出て来たので
これもレストア進めつつどうしようかO氏と決める事にしました。




こうして7月末までの3か月以上、Terrotはウチの工房で暮らす事になりました。
1930年製の彼より60年代製のワタシのGUZZIの方がみすぼらしいのは
この際放っておいてください(苦笑)



相変わらず鈑金作業はひたすら錆落としして地金磨いて
凹んだ個所叩いて均してパテ入れて砥いで
腐食の激しい個所は新たに新設して、と
地味過ぎて過去にいっぱい画像でお伝えしてきたので割愛ですw
こちらヘッドライトリム。
戦前車は今の車体の様にヘッドライトケースにステーがあって固定する、ではなく
こちらのヘッドライトリムの方に固定するベースが存在してて
ケースが文字通りケースとしてパコッと嵌ってるだけ、というのが多いです。
その根元、度重なる厚塗りで何やらモコモコしてたここ。
もしかしたら、と思いサンダーやディスクは使用せず
精密マイナスドライバーの先だけで地道にコリコリやってみたところ、
やっぱりね、です。
誇らしげに戦前のCIBIEのエンボスエンブレムが出てきました。
無頓着に機械でやってたら永遠に失われることろでした。
レストアはほぼ考古学の発掘とやってる事は同じなのです(笑)




今回一番驚いたのがこのタンク。
元の状態も悪くはなかったのですが
折角ここまでフルレストアするのであれば下地もやり直そう、と
ニッケルにするかクロームにするか直前までO氏と悩みましたが
(オリジナルではどちらも存在するらしいです)、
ニッケルでメッキかけて経年変化もそれで今後愉しもうとなりました。
が、このタンク。何かおかしい。
中覗くと底に錆が観えるのですが、タンクに磁石が引っつかない。
そして肉厚なのかどうにも単体として凄く重い。
うーん、何だかよく理解らんが現在のメッキ剥けば判明するかも。
そちらはツネちゃんにお願いしました。
(上の状態は再メッキ終わって帰ってきたすんばらしくブリリアントな状態です)




メッキ剥いたツネちゃんから来た画像みて驚愕。
このTerrotのタンク、何と真鍮製でした!!!
ぎゃ!!めっちゃゴールディw
底部のみスチールだったみたいですね。
異母材で構成されているのはこの時代がハンダがメインの時代ならではでしょうね。
しかしブラスとは驚いたなぁ。。。。



レストア前のこのリアキャリア。
いつの時代に描かれたのかは不明ですが
この何とも言えない味のあるヘタウマな文字。
「Muneさん、失礼かもしれませんけどこの文字って引き継げますか?」
えぇ、ワタシそういうの大好きです(笑)
だってそれがこの車体が80年以上歩んできた「軌跡」、ですものね。




というワケでニュアンスだけでも似ているようであれば(笑)




O氏と悪ノリして無地だった風切にも同じくこの文字をw
因みにこの風切の上に乗ってるアルミ鋳物のオーナメント。
これは当時このモーターサイクルを新車で販売したバイク屋のものだそう。
結構なお金掛かってるモノをあつらえるのも
当時はモーターサイクルが如何に高価な乗り物であったかの証拠でしょう。
刻まれたフランスのこのバイク屋の住所は今でも存在するそうで、
現在の便利ツールであるGoogleアースでO氏そこ観てみたそうですが
残念ながらもうそこはバイク屋ではなかったそうです。

夏草や 兵どもが 夢のあと(笑)






黒塗りの終わった各外装にゴールドのラインを引っ張っていく。
戦前車はフェンダーのアーチが180度以上の超ロングなものが多い。
引っ張ってる最中筆の乱れを抑える為に息は止めているか吐いているかなのだが
長過ぎてチアノーゼになるw
これが前後4本ずつある。
目眩がします(笑)


相当な高級車だったんでしょうね。
オイルタンクからチェーンケースからプライマリーケースまで
至る所に筆で装飾が施されております。
目眩がします(笑)






最後の最後までO氏が悩んでいたタンクのカラーリング。
乗る時に服のコーディネートし易い黒で戻すか、
一番下から出て来たオリジナルのブルーでいくか、
もうそういうの考えないで当時あったラインナップの中の好きな色でいっちゃうか(笑)
上塗りをペーパーで落としながら現れた色を調色で再現しているので
少し白飛びした色かもしれませんが(どうしてもペーパーの粗さで色が曇る)、
当時の貴重な色を一応ワタシもデータとしてストックした状態で回答待ち。

結果、ブルーで行こう!!という決断に。
トランスルーセントブルーという当時のラインナップ。
透明なブルー、要はキャンディだったのです、このブルー。
そして下地はシルバーかと思いきやこのカスタード色。
同じ年式でイギリスではNortonに代表されるようにメタリック(シルバー)はもうあるので
敢えてこの色をTerrotはベースカラーとして選んだようです。
因みにKAWASAKIのマッハのブルーは同じ手法で
ソリッドの真っ白にキャンディでブルーかけてあの色にしてます。
でもゴールドの方はベースはシルバーです。
なんで色で下地分けたのかは謎です。
まぁカワサキだからでしょう(笑)


かくして7月下旬、タンクを除く全ての外装のレストアを終えて
車体はO氏の元へと久々に戻る事になりました。

あとゴールドのライン筆入れとトランスファー入手待ちのタンクを借乗せ。
キャンディって写真では若干色味が変わるのでアレですが
実際のこのブルーは深くもっとダークで
下地のカスタードの効果で少し緑がかっても観えるいい色です。

うん、リアキャリアのライセンスも悪くないw


言わなきゃこっちも元から描いてあったようにしか見えない(笑)


何か3か月以上一緒に工房で過ごしてきたから
何だか寂しいよ(苦笑)
いっぱいお前をあちこち眺めながらスコッチ呑んだなw
ありがとね。





















おかげでフランス車に凄い興味が出てしまったよ。
という事でワタシはこいつを引っ張ってくるのが夢になりました。
1929年製Majestic(笑)
ぜってー日本にいねぇよwww
お前サイコー♪


























というワケで残りのライン入れも終わり、
トランスファーもO氏が入手し貼ってエナメルクリアでトップコート
ニッケルメッキの上にだからトランスファーの上にだけ塗る作業。
これならウレタンの上塗りないからワタシだって何も悩まない♪
これから先のトランスファーが全部上からエナメルで抑えるだけで良いのなら
どんなにか人生バラ色なんだろーなーーー(泣)






















そしてタンクの完成画像を撮り忘れる、というね(笑)
まぁ涼しくなったらO氏が車体仕上げて乗って来てくださるそうなので
それを凄く心待ちにして愉しみは先にとっておく事にしますw


長きに渡ったレストアプロジェクト。
O氏、貴重な車体ありがとうございました!!

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