2014年9月4日木曜日

BMW R nineT Project

8月末、公開解禁になったBMW R9T。

ワタシと46さんの出会いは、ここ立川に店を構えてから1年ほど経過した位。
たまたまBMWのペイントでショップを探していた46さんが来店、
以来、RITMO時代のペイントを担当する事になったのが10年位前の話。

そしてRyozzy君との出会いもほぼ10年位前。
彼は最初に360㏄のキャリー、ワタシは360㏄のサンバーで
無謀にも起業して働いてはいたものの
サブロクでは到底モノが運べず
彼は当初デリボーイに、ワタシは12年来の相棒である廃エースに。
で、彼がネットで「サブロクで仕事するようなバカは他にいないだろう」で検索。
見事にワタシが引っ掛かり行き来する仲となりました(笑)

互いにがむしゃらに駆け抜けた10年。
ここで46さんが一念発起で独立します。

独立第一弾で舞い込んできたビックプロジェクトが
このR nine Tプロジェクトだったのです。

46さんにとっては外装をゼロから叩き出して製作というのは
実は初めての試みです。

これまでの互いの10年。
そしてこれからの互いの10年に向けての出発の門出。

それが全てこの車体に集約されるであろう事は
もう十分な程に実感しつつの緊張のスタートとなりました。


彼はカスタムビルダーではありますが
絶対に車体の走行性能をスポイルするモディファイはしない。
それは今までのレースでの姿勢でも十分承知。
そして同じ様にオーディエンスもそう思っている事でしょう。

そしてもう一つ大事なコトは
彼は全てに於いて上品さとシンプルさを心がけるという事。
ペイントでも派手な事は一切せず
シンプルに・そして上品に美しく。
請け負う身としてはこれを肝に命じて作業をしていきます。

シンプルで美しい色。
そしてその色を映え渡る様に魅せる「下地」を徹底的に造り込む事。

色のチョイスと映り込みの美しさに全ての技術を注ごうと
今回はそこに全力を注ぎ込む事にしました。

「少しダーク目のブルーで」
これが46さんのオーダー。
専門的な話になりますがドイツ車でいう濃紺は
少し赤みを帯びた紫っぽい紺が多いので
本来ならそっち方向の紺でいくのが無難。
でも人間の「目」というのは実はかなりファジーなものでもあり、
実はこの車体にチョイスした紺は緑入ってます。
要は厳密に言うと「紺」ではないんです。
色味としては戦前のフラットタンカーなんかによく用いられていた紺。
現行で近未来的な車体に戦前の色を持って来る事で
皮肉にも都会っぽいというかアーバンというか
程良い「冷たさ」に見えるんじゃなかろうか、という作戦。
人間の「ファジー」さを逆手に取ってみる事にしました。

勿論、子持ちラインは今まで何百台と引いてきた手引き。
今回唯一遊んだ場所がエンブレム。

ハンドメイドの緩さも含めて
ここだけ遊ばせてもらいます(笑)

銀箔でロゴのライン貼ったら
アコウ貝(アワビ)貼る為に彫刻刀でサフェーサーまで塗膜を削ります。
普通アワビ貝はペイントで使うものではないので
上から貼ってしまったのではいくらクリア吹いても段差が消えません。
これは自分のドカのカウルで実証済。
なので下地出ないギリギリまで彫刻刀で彫り下げるのです。

アワビ貝はバックグラウンドが黒でないと
あの虹色の美しい模様が出ません。
なので中をエナメルの黒で塗っておきます。

当たり前ですが貝殻は柔軟性なんてありませんから
3次曲線に貼り付けるのは不可能です。
よって細かく砕いたかけらを貼っていきます。

ワタシの大好きなマヤ・アステカ文明風ロゴが出来ました(笑)

こんな感じでタンク左右とシートカウルに更に小さいエンブレムを。


46さんからのオーダーで
タンク上に関わったショップの名前を刻む事に。
普段ワタシは自分の屋号を一番下にするように心掛けているのですが
今までの10年、そしてこれからの10年への挑戦の証となるこの車輛、
僭越ながら屋号を上の方に描かせて戴きました。

そしてラストのクリアフィニッシュです。
望んだストレートボディに正直ホッとしました。

この真っ直ぐ移り込む蛍光灯こそが
ワタシから46さんへ向けて送る最大の「手向け」になれば
是幸い、です。

7月の猛暑の中パテ粉臭にやられてゲロ吐きましたが
これ観てると全て浮かばれます(笑)

あ、実はもう1か所遊ばせてもらったんです。
シートカウル中の小物入れのとこw
ここに関しては「好きに遊んでいいよ」と許可戴いたので(笑)
でもやって後悔した。
狭すぎて中に手を入れてマスキング貼ろうとしてら全く目視出来ない(苦笑)
仕方がないので全部ブラインドマスキングとピンセットで微調整。
ボトルシップ造ってる様な作業。。。。。

こうして仕上がった外装を渡したのが7月最終週。
外装の色を観てから革をチョイスする予定のRyozzy君、
そして全ての組み上げに全力を注ぐ46さんにバトンタッチです。

Ryozzy君はこんな形でプロジェクトにクロスオーバー。
スウェードの淡いタン。
いいね♪


空港で撮影されたPVが7月最後の日。
そして一般公開が8月末。
8月のお盆過ぎ、一度車体が46さんトコに戻るというので
3人で集まって眺めつつ乾杯しようか、と一路山梨へ。
頑張る父ちゃんをそっとしておいてくれたご褒美に
ファミリー皆で花火大会。


KIDSらおおはしゃぎだったので嬉しい限り。
というか大樹はもうほぼ大人だなぁ。
というかもう俺より大きいもんなぁ(涙)

酒に弱い46さんをユサユサ揺すって強引に起こしつつ

大変心地よい打上げとなりました(笑)

そして先週、世界に向けて遂に一般公開されました。

中嶋志朗という男が「無」から練り上げたモーターサイクル。

もし思っていた通りの満足な仕上がりであってくれたなら
プロジェクトに携わったワタシとしても嬉しい限り。
予想より良かった、となればもっと光栄しきり。

次の10年に向けての第一歩。
どんな10年後になっているのでしょうかいの?
46さんは46Worksとして様々なものを生み出していくでしょうし
ワタシは少なくとも娘が丁度10年後で20歳だから
まぁどんな事あってもこのままペインター続けてるでしょうな。
Ryozzy君はもしかしたら家構えて子供もいるかも、だな。

10年後にこのプロジェクト回想して笑って
「次の10年に向けて何やろっか」
またその時に新たな10年後への何かが始まっていれば
そんな人生は悪くはないな。
取り敢えずの目標として、先ず生きていよう(笑)
一番大事な事、だ。




そんなBMW RnineTプロジェクト。
よろしければご覧くださいませ。