2010年8月16日月曜日

ヒビだらけのアーカイブス



















先月よりお預かりしたこちらのタンク、
昨日無事に納品となりました。




HARLEY DAVIDSONが1976年に出した
アメリカ建国200周年を記念したタンク、
通称「リバティー・タンク」と呼ばれています。
このタイプのタンクとスポスタタイプと
どうやら2種類以上のバリエーションがあったようです。
非常にコレクタブルなタンクのようで
現在ではかなりの高値で取引されているようです。




が、このグラフィックが問題で、
現存のものを見るとほぼ色抜けして白黒になっているか
こちらのようにヒビ(クラック)だらけのものが殆どで
状態の良いモノは中々残ってはいないようです。
今回はこのクラックをどうにかしてくれ、です。




お預かりして改めてタンクを観察すると、
どうやらこの派手なグラフィックが下地の一番下。
で、その上にベースの黒と
(正確には限りなく黒に近い濃紺~濃紫ですね)
上にレインボーのフレークが散らされています。
グラフィックがバッチリ断崖絶壁で下にいました。
で、そのグラフィック部分のクリアがかなりダメージ受けています。
どうしてグラフィックがヤラレたのか更に観察してみます。
あくまで推測ですがこのグラフィック、
ビニール系のものではなく、紙媒体に帰属するもののようです。
「いや、外走る外装に紙媒体はねーだろ?」
と普通日本人は考えますが、
何しろアメリカ人はたまにそーゆーコト、やらかすんですね(笑)
勿論剥離したワケではないのであくまで推測ですが、
過去に剥いでたらパルプが飛び散った経験があるので
まんざらでもないでしょう。
だから経年変化で相当に「動く」下地だったので
このように堅いクリアが付いていけなくなった、と解釈します。




その推測に基づいてではレストアしていきましょう。
























推測からすると下地が相当に吸い込むはずです。
ならばクラック(クレバスと言っていいでしょう)上辺だけ固める
流動性の少ないエポキシはNGです。
しかし、溶剤で下地が負ける可能性もあります。
一番流動性のあるのはラッカーかアクリルです。
で、上塗りと相性いいのは勿論ウレタンです。
ラッカーはその後の完全乾燥が3ヶ月くらいは掛かっちゃうので却下。
特別配合のウレタンで行くかアクリルでいくか慎重に判断します。
他のリバティー・タンクを観ると色抜けの激しい固体もあります。
という事は溶剤で色落ちも懸念されます。
何だか色々とヤヴァそうです。
なにしろ一点物の当時物です。
「失敗しました、あはは♪」ではすみません。
死んで詫びるしかありません。
激しく精神を消耗します。

一部テストピースに試した後、
毎日クレバスの上に筆と注射器でソイツを与え続けます。
そしてコイツは暫くの間それを飲み干し続けました。
ゴクゴクゴクゴク♪
ヒナにせっせと餌を与える親鳥の如く
ワタシは毎晩せっせとクレバスにそれを流し込みますw






半月ほど経過。
だいぶ飲みましたね、アナタ。流石はアメリカ人。
ついにクレバスが「ゲップ」し始めました(盛り上がりました)。
ここで一旦クリアをコーティングしましょうかね。
そして翌日筆塗りのボコボコを砥いで平滑にしていきます。
不思議なコトにこーするとまたクレバスが凹んだりします。
そして新たな箇所に凸が現れたりもするのです。
これを砥ぐ為にまたウレタンクリアをコーティングしていきます。
で、翌日またせっせと平滑に砥いで行きます。
これを何回か繰り返します。。。。






だいぶ鏡面になってきました。
今はクレバス跡にうっすら凹みがある程度です。
今回のケースはここでフィニッシュです。
下地が動いてクラックが入ったと思われる今回のケースは、
ここで無理矢理完全鏡面にしてもやはり割れるでしょう。
なので少々の「逃げ口」を作っておいてあげるのです。
因みにクリアには少々柔軟材が添加されてます。
この「動き」に追随してあげるためです。
キミの治療はここまでです。
お疲れ様。






















改めてタンクを眺めます。
コレクターズとか希少性とか置いておいて、
実にこれ、70'sしておりますな。
グラフィックに物凄く懐かしさを憶えます。
こうして観るとやはり貴重なアーカイブスでもありますね。




















印象深いのはこのライダーの背景。
青空と雲のコントラストのこの表現方法が
堪らなく当時ですね~(笑)
覚えがあったので押入れ漁って引っ張り出したら
'75年開催の「沖縄海洋博」のパビリオンのパンフ(くじら館)、
まったくこれと同じデザイン表現でした。
3歳だったけどキョーレツに憶えてます、くじら館。
そうか、だからこのデザイン、どこか甘酸っぱいのか。
あぁ、ノスタルジアw






「こないなややこしい仕事、
頭に浮かんだんはキミのトコだけやで」
と、京弁でご依頼くださったK様、
お褒めに授かり光栄です
(一応褒められたと解釈させて戴きますw)
こういう地味なテクニック駆使系のお仕事、
今後も有難くお受け致します。

この度はご用命、ありがとうございました~♪
さー、あとは夏季休業までに
RZ一式(2台中先に預かった方)、BMW2台、
DUCATIのF系カウル、メット、HDタンク修正だ
って、まだ結構あるなぁ。。。。

4 件のコメント:

  1. 要するに、当方のタンクに施した「コケ傷晒し補修」の応用編ということですよね。

    追伸:「くじら館」行ったんなら誘ってくださればよかったのに。

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  2. 七面鳥と鶏殿
    いえ、そちらは惰性と時間が解決する
    いわば「秋芳洞形成工法」で、
    こちらは綿密な計算の基に再構築されていく
    いわば「重要文化財保護工法」で
    ニュアンスが全く異なりますw

    追伸:くじら館。
       貴殿はまだこの世でまだ輪廻転生中、
       思わくば鯨そのものであったと推測されます。
       また、3歳そこらのワタシでは
       NTTドコモへの加入すらままならず、
       大海原の貴殿へのお誘いコールはほぼ不可能か、と。
       ザンネンです。。。

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  3. わぁ~すごい。僕なんかだとこのヒビが
    たまらなくよかったりするんですがw 放っておく
    わけに行きませんもんね。将来的には干上がった
    河川のようにペリペリとめくれ上がるんでしょうか・・・

    ペズリー柄の壁紙で覆ってクリアーが吹かれた
    70年代のテレキャスターも同じクラックの入り方してて
    興味深いですね。

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  4. ヲルタナ殿
    そうですね~、このヒビなんかは
    経年変化の賜物でもあるので
    確かに味なのですが、
    実用に耐える事を考えると
    このクラックが地金に達していると
    このタンクは寿命が見えてしまいます。
    だからせめて下地にまで達しないくらいに
    クラックを埋めてあげれば再び第一戦に耐え得るので
    最低限の仕立て、と解釈すればいいか、と。

    そそ、壁紙系のビンテージって
    殆ど同じ経年変化になってますよね~
    でもその無茶っぷりも当時っぽくて
    いいんですよね~(笑)

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